強さと美しさを備えた『機能美』の魅力。

現代に蘇った船箪笥は、ちゃんと“浮く”のか

船箪笥に必要な条件、それは「海に投げ込んでも浮くほどの気密性を保ち、中のものを失わないこと」です。江戸時代の船旅は、海難事故と隣り合わせでした。緊急時には投網を張って積み荷を海に捨て、最後にお金や印鑑をしまった船箪笥を投げ込んだため、「浮くこと」はとても重要でした。

しかし、先代の勝木が船箪笥と出会ったのは昭和47(1972)年のこと。船箪笥が廃れてから実に80年ほどの年月が流れており、「船箪笥は海に浮く」と聞いたことはあっても、実際に見たことがある人は皆無でした。

7年の歳月をかけ、製造技法の研究に試行錯誤を重ね、復元製作工程を確立した勝木。しかし、年配の方々から度々投げかけられる「鉄製の金具もついているのに、本当にこの箪笥は浮くのか」という疑問に、胸を張って「はい」と答えられる自信はまだなく、「これは一度落としてみないと、自分も納得できない」と思うに至ったのです。

 

三国箪笥・舟箪笥のアップ写真

三国箪笥・舟箪笥の作業風景

鉄製である三国箪笥・舟箪笥を東尋坊から海へ投下実験をした様子

 

職人自ら東尋坊から投下し、その特徴・実力を証明

平成6年3月16日。幾度もぶつかってきた疑問と自身の技術を確かめるため、勝木は高さ20m 以上の東尋坊から、自分で復元・製作した船箪笥の投下実験を行いました。

真っ逆さまに落ち、大きな着水音とともに吸い込まれるように沈む船箪笥。ニュースも生放送で中継されており、全員が固唾を飲んで見守っていました。1秒・・・2秒・・・いつもより長く感じられる時間でしたが、ほんの数秒後に船箪笥は再び姿を現します。破損はほとんどなく、「これで、私の箪笥が浮くことは証明できました。普通の箪笥なら、海面に叩きつけられた衝撃で壊れてしまうでしょう。船箪笥の頑丈さは折り紙つきです」と語りました。

しかし、この投下実験の結果は、勝木にとって100%満足のいくものではありませんでした。内部に少し水が入り込んでいたのです。自分の未熟さを痛感するとともに、それ以来、さらなる完成度の高さを求めて技術の研鑽に全力を傾けました。その積み重ねが、今日の「匠工芸」の品質と信頼に繋がっているのは言う間でもありません。当社の船箪笥が、高い気密性と安全性を兼ね備えていると自信を持って皆様にお勧めできる、『原点』とも言える実験です。

 

 

 

 

 

 

 

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